ビジネスの「守り」の要!秘密保持契約(NDA)を徹底解説

ビジネスを進める上で、他社との提携や取引の検討、新しいプロジェクトの立ち上げなど、重要な情報を共有する場面は多々あります。その際、自社のノウハウや顧客情報、事業戦略といった「秘密情報」を守るために不可欠なのが、秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)です。

今回は、この秘密保持契約(NDA)について、その役割やメリット、契約のポイントをわかりやすく解説します。


 

秘密保持契約(NDA)とは?

 

秘密保持契約(NDA)は、当事者間で開示される秘密情報について、目的外の利用三者への開示・漏洩を禁止することを約束する契約です。「機密保持契約」と呼ばれることもありますが、実質的な内容や法的効力に大きな違いはありません。

特にビジネスにおいては、商談の初期段階や業務提携、M&A(企業の買収・合併)の検討など、まだ正式な取引が始まる前の段階で締結されることが多く、情報が外部に漏れるリスクを未然に防ぐ「防波堤」の役割を果たします。

 

NDAを締結する主なメリット

 

NDAを締結することは、情報を開示する側(開示者)と受け取る側(受領者)の双方にメリットをもたらします。

 

1. 秘密情報の流出防止

 

契約によって、情報の利用目的を限定し、無断開示を禁止することができます。これにより、自社の競争上の優位性を損なうような、ノウハウや顧客情報などの流出リスクを大幅に軽減できます。

 

2. 損害賠償請求の根拠となる

 

万が一、相手方が秘密保持義務に違反して情報が漏洩し、自社が損害を被った場合、NDAの規定に基づいて損害賠償を請求する法的根拠となります。

 

3. 保護する情報の範囲を指定できる

 

不正競争防止法で保護される「営業秘密」よりも広い範囲の情報を「秘密情報」として定義し、保護の対象とすることができます。これにより、より実効的な情報保護が可能です。

 

NDAに定めるべき重要な条項

 

効果的なNDAとするためには、以下の重要なポイントを明確に定める必要があります。

条項 概要と重要性
秘密情報の定義 どの情報が秘密情報に該当するのか、その範囲を明確にします。あいまいだと、後々のトラブルの原因になります。
開示目的 秘密情報を使用できる目的を限定します(例:「〇〇に関する協業の検討」)。目的外の利用を禁じるための要となる規定です。
秘密保持義務 受領者が情報を厳重に管理し、第三者に開示・漏洩しないことを義務付けます。
有効期間・存続期間 秘密保持義務がいつからいつまで有効であるかを定めます。通常、契約終了後も一定期間(例:3年〜5年)は秘密保持義務を負うと定めることが多いです。
秘密情報の返還・廃棄 契約終了や開示者の要請があった場合に、秘密情報を速やかに返還または廃棄することを義務付けます。
損害賠償 契約違反があった場合の損害賠償責任について定めます。

締結のタイミング

 

NDAは、秘密情報を開示する前に締結する必要があります。

  • 商談・打ち合わせを行うとき:事業内容や技術の詳細を説明する前。

  • 取引を開始するとき:より機密性の高い情報が開示される前に。

  • 提携・M&Aを検討するとき:財務情報などの重要な経営情報を開示する前に。

口頭での約束や「信用できる相手だから大丈夫」といった判断だけで秘密情報を開示するのは非常に危険です。常に情報の重要性を認識し、適切なタイミングでNDAを締結しましょう。


秘密保持契約(NDA)は、一見すると煩雑な手続きに思えるかもしれませんが、安全なビジネス取引を行うための必須のステップです。自社の重要な資産である情報を守るため、その重要性を理解し、正しく活用しましょう。