AWSやAzureなどのクラウド環境でVMを運用する上で、バックアップは企業のデータ保護戦略において不可欠な要素です。中でもスナップショットは、迅速なリカバリを実現するための重要な手段ですが、長期的に保存するとなるとコストが課題となることがあります。
そこで本記事では、AWSとAzureのハイブリッドクラウド環境のバックアップにも対応する「N2WS Backup & Recovery」に焦点を当て、EC2インスタンスおよびAzure VMのスナップショットを長期的に保管する際のアーカイブ先オプション、それぞれのメリット・デメリット、そしてコスト効率の良い長期保管戦略について詳しく解説します。
なぜスナップショットアーカイブが必要なのか?
VMのスナップショットは、その時点のディスクイメージを効率的に保存し、必要に応じて迅速に復元できる便利な機能です。しかし、一般的なスナップショットは、高いアクセス頻度を想定したストレージ層に保存されるため、長期保存にはコストがかさむ傾向があります。
- コンプライアンス要件: 業界規制や社内ポリシーにより、数年単位でのデータ保持が義務付けられている場合があります。
- ディザスタリカバリ (DR): 広範囲な障害からの復旧に備え、過去の時点のデータを安全に保管しておく必要があります。
- コスト最適化: 長期的にアクセスされることの少ないデータを、より安価なストレージ層に移行することで、総保有コストを削減できます。
これらの理由から、N2WSはスナップショットデータをコスト効率の良いストレージ層にアーカイブする機能を提供しています。
N2WSにおけるEC2スナップショットのアーカイブ先
N2WSは、AWS環境のEC2インスタンススナップショットを以下のストレージにアーカイブできます。
1. AWS S3 Glacier / Glacier Deep Archive
EC2インスタンスのスナップショットは、Amazon EBS上に取得されますが、その実体はS3標準ストレージクラスに保存されています。N2WSは、このEBSスナップショットをさらにコスト効率の良いS3 GlacierやS3 Glacier Deep Archiveにアーカイブする機能を提供します。
- S3 Glacier: 数分から数時間のデータ取得時間で、非常に低コストでデータを保管できます。
- S3 Glacier Deep Archive: S3 Glacierよりもさらに低コストで、数時間から半日程度のデータ取得時間となります。アクセス頻度が極めて低いデータや、規制要件による長期保存に適しています。
メリット:
- 圧倒的な低コスト: 数年にわたる長期保存において、EBSスナップショットやS3標準ストレージクラスと比較して、大幅なコスト削減が可能です。
- 自動化: N2WSのバックアップポリシー設定により、EBSスナップショットからS3 Glacier/Deep Archiveへのアーカイブを自動化できます。
- EBSスナップショットの即時削除: N2WS v3.1以降では、S3へのアーカイブが完了したEBSスナップショットを自動的に削除するオプションが追加され、コストをさらに最小化できるようになりました。これにより、バックアップデータの保持コストはアーカイブ先のS3バケットのストレージクラスの料金のみとなります。
デメリット:
- データ取得時間: GlacierやDeep Archiveからのデータ取得には時間がかかります。緊急のリカバリには向いていませんが、長期保管や監査目的のデータには最適です。
N2WSのAnySnap Archiver機能を使えば、N2WSで取得していない既存のEBSスナップショットも、指定したS3バケット(Glacier/Deep Archive含む)へアーカイブし、コストを抑えることができます。
N2WSにおけるAzure VMスナップショットのアーカイブ先
N2WSは、Azure環境のVMスナップショットを以下のストレージにアーカイブできます。
1. Azure Blob Storage (クール/アーカイブ層)
Azure VMのスナップショットは、Azure Managed Diskのスナップショットとして保存されますが、N2WSはこれをAzure Blob Storageへ効率的にアーカイブします。特に、Blob Storageの階層型ストレージを活用することで、長期保管のコストを最適化できます。
- クール層: アクセス頻度が低く、長期間(30日以上)保存されるデータに適しています。ホット層より安価です。
- アーカイブ層: アクセス頻度が最も低く、長期間(180日以上)保存されるデータに適しています。最も安価なストレージ層ですが、データ取得に時間がかかります。
メリット:
- コスト効率: Azure Blob Storageの階層型ストレージを利用することで、長期保管コストを大幅に削減できます。
- 柔軟なアクセス層選択: データのアクセス頻度に応じた最適なストレージ層を選択できます。
- 直接バックアップ対応: N2WS v4.4では、Azure Blob Storageのコールドティアストレージやアーカイブ層への直接バックアップに対応し、さらに効率的なデータ保護が実現されています。
デメリット:
- データ取得時間: アーカイブ層からのデータ取得には時間がかかります。クール層でもホット層よりは時間がかかります。
2. Wasabi (S3互換ストレージ)
N2WSは、Azure環境のバックアップデータをS3互換のオブジェクトストレージであるWasabiにアーカイブすることも可能です。Wasabiは、その料金体系(Egress料金なし、APIリクエスト料金なし)から、特に大量のデータを頻繁に読み出す可能性があるアーカイブ用途において、コストメリットがある場合があります。
メリット:
デメリット:
各アーカイブ先のメリット・デメリットと選択のポイント
- RTO/RPO要件: データをどれくらいの時間で復旧したいか、どの時点までデータを戻せればよいか、によってアーカイブ層の選択が変わります。
- アクセス頻度: アーカイブしたデータをどれくらいの頻度でアクセスする可能性があるか。
- コスト: 総保有コスト(ストレージ料金、データ転送料金、APIリクエスト料金など)を総合的に評価します。
- コンプライアンス: データ保持期間や不変性などの規制要件を満たすか。
N2WSでのアーカイブ設定方法(概要)
N2WSでのアーカイブ設定は非常に直感的です。バックアップポリシーの作成または編集画面で、アーカイブ先のストレージ(S3バケットやAzure Blob Storage)、保持期間、そしてアーカイブのトリガー(例: EBSスナップショットをS3に転送後、即時削除する)などを設定できます。数クリックでポリシーを適用し、自動的にアーカイブ運用を開始することが可能です。
まとめ
N2WS Backup & Recoveryは、EC2インスタンスやAzure VMのスナップショットを、それぞれのクラウドプロバイダが提供する低コストなストレージ(AWS S3 Glacier/Deep Archive、Azure Blob Storageのクール/アーカイブ層)に効率的にアーカイブする機能を提供します。これにより、コンプライアンス要件を満たしつつ、バックアップデータの長期保管コストを大幅に削減することが可能です。
貴社のAWS/Azure環境のデータ保護戦略において、コスト効率とリカバリ要件のバランスを取りながら、N2WSのスナップショットアーカイブ機能を最大限に活用し、堅牢なデータ保護体制を構築することをおすすめします。