近年、企業のIT環境はクラウド化が進み、従業員はオフィス内だけでなく、自宅や外出先から様々なアプリケーションにアクセスするのが当たり前になりました。
このような環境変化の中で、「誰が」「何に」アクセスしているのかを確実に管理し、サイバー攻撃から守るための鍵となるのが、「ID(アイデンティティ)管理」です。
Microsoftが提供するMicrosoft Entra IDは、まさにこの現代的な課題を解決するための、クラウドベースのIDおよびアクセス管理(IAM)ソリューションです。
💡 Entra IDとは?:まず知っておくべきこと
1. クラウド時代の認証基盤
Microsoft Entra ID(読み方:マイクロソフト エントラ アイディー)は、クラウドサービスであるMicrosoft 365やAzureだけでなく、Salesforce、Zoom、Boxなど、数千ものSaaSアプリケーションへのアクセスを管理し、認証を一手に担うサービスです。
2. 旧名称は「Azure AD」
もともとは「Azure Active Directory(Azure AD)」という名前で広く知られていましたが、2023年7月に「Microsoft Entra ID」に改名されました。基本的な機能やサービスに変更はありません。
3. 「Entra」はゼロトラストの核
Entra IDは、Microsoftが提唱するゼロトラスト(「決して信頼せず、常に検証する」)セキュリティ戦略の中核をなす「Microsoft Entra」ファミリーの中心的な製品です。
🔑 Entra IDが提供する主要な機能
Entra IDの導入が組織にもたらす最大のメリットは、セキュリティの強化とユーザーの利便性向上の両立です。
1. シングルサインオン(SSO)でストレスフリーに
SSO機能を利用すれば、ユーザーは一度Entra IDにサインインするだけで、社内で利用するすべてのアプリケーション(クラウド、SaaS、オンプレミス)にアクセスできるようになります。
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利点: アプリごとに異なるパスワードを覚える必要がなくなり、パスワード忘れによるIT部門への問い合わせが激減します。
2. 多要素認証(MFA)でセキュリティを強固に
パスワードだけの認証は、フィッシングやリスト型攻撃によって容易に破られてしまうリスクがあります。
Entra IDの多要素認証(MFA)は、パスワードに加えて、スマートフォンへの通知、指紋認証、ワンタイムパスワードなど、複数の認証要素を要求することで、不正アクセスを強力に防止します。
3. 条件付きアクセスで動的に制御
「条件付きアクセス」は、Entra IDの最も強力なセキュリティ機能の一つです。これは、ユーザーがアクセスしようとする際に、以下の条件をリアルタイムで検証し、アクセスの可否やMFAの適用を動的に判断する機能です。
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誰が: リスクの高いユーザーではないか
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どこから: 信頼できない国や地域からのアクセスではないか
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どのアプリに: 機密性の高いデータを含むアプリか
この機能により、「社内からならパスワードのみ、社外からならMFAを必須」といった、柔軟で強固なセキュリティポリシーを実装できます。
4. オンプレミスADとの連携(ハイブリッドID)
多くの企業が利用しているオンプレミスのActive Directory(AD)とも連携できます。Entra ID Connectというツールを使えば、オンプレミスADで使っているユーザーIDをEntra IDに同期し、クラウドとオンプレミスの両方で同じIDを使える環境(ハイブリッドID)を実現できます。
📈 まとめ:Entra IDが組織にもたらす価値
| 導入メリット | 詳細 |
| セキュリティ強化 | MFA、条件付きアクセス、ID保護(P2)により、不正アクセスや情報漏洩のリスクを大幅に低減します。 |
| 生産性向上 | SSOにより、ユーザーはパスワード入力の手間から解放され、すぐに業務に取り掛かれます。 |
| 運用効率化 | ID管理を一元化できるため、複数のシステムでユーザーアカウントを作成・削除する手間がなくなります。 |
| コスト削減 | パスワードリセットなどの問い合わせが減るため、ITヘルプデスクの負担が軽減されます。 |
Entra IDは、単なるユーザー名とパスワードの保管庫ではありません。これは、企業のデジタル資産を守り、従業員がより安全かつ効率的に働ける環境を構築するための、現代のビジネスに不可欠なセキュリティ基盤なのです。