最近、PCを自作したり、メモリを増設しようとしたりした際に、その価格に驚いた方も多いのではないでしょうか。一時期落ち着いていたDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)の価格が、再び急激に高騰しています。
なぜ、私たちのPCやスマートフォンに使われるメモリやSSDの価格が、ここまで上昇しているのでしょうか?その背景には、単なる景気循環ではない、半導体市場の「構造的な変化」が隠されています。
1. なぜDRAM価格は高騰しているのか?主な3つの要因
今回の価格高騰は、過去のメモリ市場で繰り返されてきた「シリコンサイクル」とは一線を画す、根深い問題とされています。最大の要因は、世界を席巻する「AIブーム」です。
| 要因 | 詳細 | 個人ユーザーへの影響 |
| ① AI需要の爆発的増加 | ChatGPTなどに代表される生成AIの学習・推論には、従来の何倍もの超高速・大容量のメモリ(特にサーバー用DRAM)が必要です。 | AI大手企業が供給を確保するため、一般消費者向け市場に出回る量が減少します。 |
| ② HBMへの生産シフト | DRAMメーカー各社は、収益性の高いHBM(高帯域幅メモリ)の生産に注力しています。HBMは通常のDRAMより製造が難しく、同じウェハーから作れる汎用DRAMの量が減少します。 | DDR4/DDR5といったPC用汎用DRAMの供給量が減少し、品薄・価格高騰を招いています。 |
| ③ メーカーの在庫適正化 | 過去の供給過剰で溜まった在庫を消化するため、メーカーは主流DRAMの生産量を戦略的に削減してきました。その結果、急増した需要に対応できず、在庫不足が深刻化しています。 | メーカーのコスト増が小売価格に転嫁され、メモリ・SSDの値上がりに直結しています。 |
特に、今でも多くのPCで現役の規格であるDDR4メモリは、メーカーの生産軸がDDR5やHBMに移っているため、品薄が深刻で、異常な高値で推移しています。
2. PCパーツ市場への具体的な影響
この価格高騰は、既に私たちの身近な製品にも影響を及ぼし始めています。
💻 メモリ(RAM)の高騰
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DDR5メモリ:最新のAIサーバー需要の煽りを受け、特に高容量・高速な製品で価格が急騰しています。
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DDR4メモリ:メーカーの生産シフト(脱DDR4)の影響が直撃し、供給不足から異常な高値圏にあります。
💾 SSD(NANDフラッシュ)も連動して値上がり
DRAMだけでなく、SSDに使われるNANDフラッシュメモリも同様に、AIデータセンター向けのエンタープライズSSDへの需要集中や、メーカーの戦略的な減産により価格が上昇傾向にあります。
この結果、PCパーツショップでは、購入制限を行う動きも見られ、PCの新規購入やアップグレードを考えている方にとっては大きな向かい風となっています。
3. 今後の見通しと私たちが取るべき対策
メモリ市場の構造的な変化は、短期的なものではなく、今後しばらく価格上昇傾向は続くと予想されています。一部の市場予測では、2026年までDRAMの供給不足が続く可能性も指摘されています。
💡 今、私たちが取るべき対策
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「必要最低限の容量」に留める
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いますぐPCが必要な場合は、過剰なスペックを避け、必要最低限の容量(例えば、32GBではなく16GBなど)に留め、価格が落ち着いてから増設を検討する方が賢明です。
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価格動向を注視する
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一時的に価格が下がるセールを見逃さないよう、主要なPCパーツショップや価格比較サイトの情報を常にチェックしましょう。
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中古・整備品の活用も視野に
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特にDDR4など旧世代のメモリは、中古市場や整備済み品(リファービッシュ品)を探すことで、新品よりも安価に入手できる可能性があります。
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AI時代がもたらした巨大な需要の波は、私たちのデジタルライフを支える基盤技術であるDRAMの市場構造を根本から変えつつあります。この大きな流れを理解し、賢く対処していくことが、今の時代には求められています。