LINプロトコルの詳細とバス仕様について

LIN(Local Interconnect Network)は、車載ネットワーク向けに設計された低速でコスト効率の高い通信プロトコルです。特に、複雑な制御や高速な通信が必要ないシステムで採用されており、車両のさまざまなサブシステムで活躍しています。今回は、LINプロトコルの詳細やそのバス仕様について解説します。

1. LINプロトコルの概要

LINは、低速・シンプルな車載通信を目的に開発されたプロトコルです。CAN(Controller Area Network)と比較して、以下の特徴があります。

  • 低コスト: ハードウェアおよびソフトウェアの実装がシンプルであるため、コスト削減が容易。
  • シングルワイヤ通信: LINは1本のワイヤでデータ通信を行い、物理的な配線を簡素化します。
  • 低速通信: 通信速度は最大19.2 kbpsと低く、複雑な制御を必要としないアプリケーションに最適。
  • マスター-スレーブアーキテクチャ: 通信の制御は、1つのマスターと複数のスレーブによって行われ、マスターが全体の通信を管理します。

2. LINプロトコルの詳細

a. フレームフォーマット

LINプロトコルでの通信は、フレームと呼ばれる単位で行われます。各フレームには以下の構成要素があります。

  1. 同期ブレーク: フレームの開始を示すための信号で、スレーブデバイスがバスの状態をリセットし、通信の同期を取るために使用されます。

  2. 同期フィールド: 通信の速度を同期するために、固定値である0x55が送信されます。これにより、すべてのノードが正確なデータ伝送速度に合わせることができます。

  3. 識別フィールド(IDフィールド): フレームがどのノードに対して送信されているかを識別するためのフィールドです。マスターノードがこのフィールドを送信し、どのスレーブがデータを送受信するかを決定します。

  4. データフィールド: 実際のデータが含まれるフィールドで、最大8バイトのデータを送信できます。スレーブノードがこのデータを受信し、処理を行います。

  5. チェックサム: データの整合性を確認するために使用されます。送信されたデータが正しく受信されたかどうかを確認するためのエラー検出機構です。

b. マスター-スレーブアーキテクチャ

LINの通信では、マスターノードが通信を制御します。マスターノードはフレームを生成し、スレーブノードにデータを送信するタイミングを制御します。スレーブノードはマスターからの指示を受け取り、データを送受信します。このように、通信のすべてはマスターによってスケジュールされ、スレーブが自律的に通信を行うことはありません。

c. スケジュールテーブル

LINでは、通信をスケジュールテーブルで制御します。スケジュールテーブルは、どのフレームがいつ送信されるかを定義しており、予測可能な通信を実現します。これにより、通信の遅延や衝突が発生しにくく、リアルタイム性をそれほど要求しないシステムでの安定した通信が可能です。

3. LINバスの仕様

a. 物理層

LINは、シングルワイヤ物理層を採用しており、1本の通信線を通してデータが送受信されます。物理層はISO 9141に準拠しており、データの送受信における電圧レベルは以下のように定義されています。

  • 論理1: バス電圧が12Vに近い値(車載バッテリの電圧)。
  • 論理0: バス電圧が0Vに近い値。

また、シングルワイヤ構成により、物理的な配線が簡素化され、配線コストの削減に寄与します。ただし、この構成は高速通信には向いておらず、ノイズ耐性もCANより低いとされています。

b. 通信速度

LINの通信速度は、最大19.2 kbpsに制限されています。これは、複雑な制御やリアルタイム性を要求しないシステムには十分な速度ですが、高速な通信を必要とするシステムには不向きです。

c. データリンク層

LINのデータリンク層は、フレームフォーマットの管理やエラーチェック、データの送受信の管理を行います。各フレームには、マスターノードが送信する識別フィールドが含まれ、これによりスレーブノードがデータを送受信するかどうかが決まります。

d. ネットワークトポロジー

LINは、シンプルなスター型トポロジーバス型トポロジーを採用することができます。スター型では、マスターノードが中心に位置し、スレーブノードが放射状に接続されます。一方、バス型では、マスターおよびスレーブノードが1本の通信線に直列に接続されます。これにより、物理的な配線が容易で、複雑なトポロジーを必要としない場合に最適です。

4. LINの活用事例

LINプロトコルは、以下のような車載システムで広く利用されています。

  • パワーウィンドウ制御: 低速通信で十分なシステムにLINを使用し、コスト効率を高める。
  • シート調整: 複雑なデータ通信が不要なシートの位置調整やリクライニング機能にLINが使用される。
  • 空調システム: 温度センサーやファンの制御など、リアルタイム性をそれほど必要としない空調システムにもLINが適しています。

5. LINとCANの違い

LINとCANは、車載通信のための主要なプロトコルですが、それぞれの特性が異なります。

特徴 LIN CAN
通信速度 最大19.2 kbps 最大1 Mbps
アーキテクチャ マスター-スレーブ 分散型(すべてのノードが平等)
コスト 低コスト 高コスト
用途 簡単な制御・低速通信 複雑な制御・リアルタイム通信

6. まとめ

LINプロトコルは、低コストかつシンプルな車載通信を実現するための重要な技術です。マスター-スレーブ型アーキテクチャやシングルワイヤ物理層の採用により、配線やハードウェアのコストを抑えつつ、低速ながらも安定した通信を提供します。LINは、ウィンドウ制御やシート調整、空調システムなど、複雑さを必要としないシステムに最適であり、今後も自動車の各種サブシステムで重要な役割を果たしていくでしょう。