車載通信プロトコルの一つであるLIN(Local Interconnect Network)は、低コストでシンプルなシステムに適したバスシステムです。LINは特に、ウィンドウやミラー、シートの制御など、リアルタイム性をそれほど必要としない車載の補助的なシステムで広く利用されています。今回の記事では、LINフレームの基本構造と、その中でも重要なヘッダとレスポンスの詳細について解説します。
1. LINフレームの概要
LINプロトコルでは、データのやり取りがフレーム(frame)単位で行われます。LINフレームは、マスターとスレーブ間の通信の基本単位であり、1つのフレームがマスターによって開始され、スレーブがレスポンスを返す仕組みです。
LINフレームの基本的な構造は、次の2つの要素で構成されています。
- ヘッダ(Header)
- レスポンス(Response)
これらの要素が組み合わさって1つのフレームが完成します。
2. LINフレームのヘッダ
ヘッダは、LINフレームの先頭に位置し、通信の同期や識別子(ID)を送信します。ヘッダは、マスターが送信し、スレーブがこれに基づいてレスポンスを返すための準備を行います。ヘッダは以下の3つの部分から構成されています。
a. シンクブレイク(Sync Break)
- シンクブレイクは、バスのアイドル状態と区別するために使用される特定のシグナルです。LINバスではアイドル状態が12V付近の電圧で維持されますが、シンクブレイクはバスを強制的に0Vにすることで、通信の開始を明確に示します。このシグナルにより、全スレーブノードがフレームの開始を認識します。
b. シンクフィールド(Sync Field)
- シンクフィールドは、通信速度の同期に使われる8ビットのフィールドです。通常、0x55(01010101)というパターンが使用されます。このビットパターンは、ノード間で正確に通信速度を一致させるために送信されます。
c. 識別フィールド(Identifier Field)
- 識別フィールドは、送信されるメッセージを区別するための6ビットのIDフィールドと2ビットのパリティビットで構成されます。このIDは、各スレーブノードに特定のタスクやメッセージを指示する役割を果たし、どのノードがデータを送信するかを決定します。
ヘッダの役割は、主に通信の準備や同期、そしてフレームの識別にあります。特に、識別フィールドによってどのスレーブがレスポンスを返すべきかが決まります。
3. LINフレームのレスポンス
レスポンスは、ヘッダに続いて送信されるデータ部分です。レスポンスは、特定のスレーブノードが送信します。レスポンスも以下の2つのパートに分けられます。
a. データフィールド(Data Field)
- データフィールドは、送信するデータを含む部分です。通常、1〜8バイトのデータが格納され、各バイトは8ビットの値として表現されます。このフィールドは、スレーブノードが必要な情報を送信するために使用されます。例えば、センサーのデータやスイッチの状態などがここで送信されます。
b. チェックサムフィールド(Checksum Field)
- チェックサムフィールドは、データの誤り検出を行うためのフィールドです。データフィールドの内容に基づいてチェックサムが計算され、通信の信頼性を確保します。チェックサムは通常、クラシックチェックサムか拡張チェックサムのいずれかで計算されます。
チェックサムが誤っている場合、受信側はエラーを検出し、再送信を要求するか、そのフレームを無視します。
4. ヘッダとレスポンスの役割
LINフレームにおいて、ヘッダとレスポンスは通信の双方向性を確保する重要な役割を果たしています。
- ヘッダは、マスターが送信することで通信を開始し、スレーブがどのデータを送信すべきかを決定するための同期と識別情報を提供します。
- レスポンスは、スレーブが必要なデータをマスターに返すための領域であり、通信の完了を意味します。
このように、LINプロトコルはマスター・スレーブ方式に基づいており、マスターがヘッダを送り、スレーブがレスポンスを返すことで効率的かつ低コストでの通信が実現しています。
5. LINフレームの活用事例
LINプロトコルのフレームは、車両内のさまざまなサブシステムで使用されています。以下にいくつかの具体例を挙げます。
- ウィンドウ制御: ウィンドウの開閉を制御するために、マスターがウィンドウスイッチの状態を監視し、必要に応じてモーターに信号を送ります。この際、マスターがヘッダを送信し、モーター側のスレーブがレスポンスとしてウィンドウの位置データを返します。
- ミラー調整: ミラーの角度調整やヒーターの状態確認も、LINバスを使用して行われます。調整スイッチの状態をヘッダとして送信し、ミラーモーターが適切な角度に調整されます。
- シート制御: シートの前後や背もたれの角度を調整する際にもLINが利用されます。シートの制御ユニットがマスターとして動作し、座席のセンサーデータをスレーブから受け取ります。
6. まとめ
LINフレームのヘッダとレスポンスは、車載システムの効率的な通信を実現するための基盤です。ヘッダは、通信の開始とスレーブノードへの指示を行い、レスポンスはスレーブがデータを返すための部分です。これにより、車両内の様々なシステムが低コストかつ信頼性の高い方法で相互に通信することができます。
LINは、CANバスと比べてシンプルかつコスト効率が良いため、特にリアルタイム性が要求されない車載システムに適しており、今後も多くの場面で活躍が期待されます。