2025年9月版のプログラミング言語人気ランキングを見渡すと、Pythonの独走体制はもはや揺るぎないものとなっています。しかし、その華やかな影で、古豪であるPerlが徐々に順位を上げているという興味深い現象が見られます。
なぜ、現代のプログラミングシーンにおいて、一時期は「過去の言語」と見なされがちだったPerlが再び注目を集め、ランクを上げているのでしょうか?その理由を、いくつかの視点から推測してみましょう。
1. 「レガシー資産」の再評価と保守需要の増加
多くの企業において、インターネット黎明期やWeb初期に構築されたシステムには、Perlで書かれたコードが今なお稼働しています。これらのシステムは、企業のコアな業務プロセスを担っていることが少なくありません。
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システム延命・保守の必要性: 企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める一方で、すべてのレガシーシステムを一度に刷新するのは非現実的です。まずは既存のPerl資産を理解し、セキュリティ対策や機能改修を施して延命させるというアプローチが取られ始めています。
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「Perlができるエンジニア」の希少価値: 世代交代が進み、Perlを深く理解しているエンジニアが減るにつれて、そのスキルを持つ人材の市場価値が相対的に高まっています。保守・改修の需要が増える中で、Perlスキルはニッチながらも高単価なスキルとして再評価されている可能性があります。
2. テキスト処理・データ整形における「Perlらしさ」の再認識
Pythonは多目的な言語ですが、Perlが本領を発揮するのはテキスト処理と正規表現(RegEx)の領域です。この「Perlらしさ」が、現代のデータ処理ニーズに意外な形でマッチしています。
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ログ解析・設定ファイル操作: 巨大なログファイルや複雑な設定ファイルを高速かつ柔軟に処理するタスクにおいて、Perlの組み込み機能や正規表現の扱いは今なお最高峰です。
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パイプライン処理: データの前処理(ETLプロセス)において、データを取り込み、整形し、次のプロセスに渡すという一連の処理を、Perlは非常に簡潔かつ効率的に記述できます。
3. Perl 5からPerl 7/Raku (Perl 6)への進化とコミュニティの努力
Perlは進化を止めていません。特に、後継言語であるRaku (旧Perl 6) は、現代的なプログラミングパラダイムを取り入れ、並行処理やイミュータブルなデータ構造などをサポートし、言語としての魅力を高めています。
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Rakuのモダンな機能: Perl 5の堅牢さと、Rakuが提供するモダンな機能(例:組み込みの並行処理)が、開発者に新しい選択肢を与えています。
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CPAN (The Comprehensive Perl Archive Network) の充実: Perlのライブラリ群であるCPANは、今も非常に豊富で実用的です。Web開発からシステム管理まで、必要な機能の多くがCPANで見つかります。古くからあるライブラリは非常に安定しているという信頼感も強みです。
4. 「堅実な道具」としての価値
多くの新しい言語が登場し、流行り廃りがある中で、Perlは「堅実で、古くからの問題解決実績がある道具」として、再び見直されているのかもしれません。
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開発速度と安定性の両立: 小規模なスクリプト開発においては、Pythonよりも短く、直感的な記述で目的を達成できる場合があります。また、大規模システムでの運用実績が長いため、言語自体の安定性に対する信頼も厚いです。
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プログラミング言語の多様化: 以前は「Perl vs. PHP」といった二項対立的な見方が支配的でしたが、現在は多種多様な言語が共存しています。その中で、特定のニッチな分野で高い能力を発揮するPerlが、専門的な用途で再び選ばれていると考えられます。
まとめ
PythonがデータサイエンスやAI分野で圧倒的な人気を誇る一方で、Perlがランクを上げている背景には、単なるノスタルジーではなく、「レガシーシステムの延命と保守」という避けられないビジネスニーズと、「テキスト処理という分野での代替の効かない強力なツール」としての再評価があると言えるでしょう。
Perlは、流行を追う言語ではなく、「裏方で確実に仕事をこなす」というその本質的な価値が見直され、熟練したエンジニアたちによって再び採用され始めているのではないでしょうか。