Arduino UnoでCAN通信!R3、R4 Minima、R4 WiFiそれぞれの選択肢と始め方

Arduino UnoでCAN通信を実現したいと思った時、「どのUnoボードを選べばいいんだろう?」「どうやって実装すればいいの?」といった疑問が浮かびませんか?

今回は、定番のArduino Uno R3、そして新世代のArduino Uno R4 MinimaArduino Uno R4 WiFiの3つのボードでCAN通信を利用する方法について、それぞれの特徴と必要なものを詳しく解説していきます!


 

CAN通信とは?なぜArduinoで使う?

 

CAN通信は、複数の機器が1本のバスラインを共有してデータをやり取りするためのシリアル通信プロトコルです。自動車のECU(電子制御ユニット)間の通信で広く使われているため、「車載ネットワーク」のイメージが強いかもしれません。

CANの主な特徴:

  • マルチマスター方式: どのノードも自由にデータを送信できる。

  • 高信頼性: エラー検出・回復機能が強力。

  • リアルタイム性: メッセージの優先度を設定できる。

ArduinoでCAN通信を利用することで、自動車のOBD-IIデータ読み取り、産業用ロボットの制御、スマート農業機器の連携など、様々な応用が可能になります。


 

Arduino Uno R3でCAN通信を行う方法

 

Arduino Uno R3は、直接CAN通信機能を内蔵していません。そのため、外部のCANコントローラーチップCANトランシーバーチップを搭載したモジュールを接続する必要があります。

 

必要なもの

 

  1. Arduino Uno R3ボード

  2. CANモジュール (MCP2515 + TJA1050/SN65HVD230などの組み合わせ)

    • これは最も一般的な選択肢で、CANコントローラーであるMicrochip MCP2515と、CAN通信の物理層を担うCANトランシーバー(例: NXP TJA1050やTexas Instruments SN65HVD230)がセットになったモジュールです。

 

接続方法と実装

 

CANモジュールは、通常SPI (Serial Peripheral Interface) という通信方式を使ってArduino Uno R3と接続します。

  • SPIピンの接続:

    • MCP2515のCS (Chip Select) ピン → UnoのD10ピン

    • MCP2515のSCK (Serial Clock) ピン → UnoのD13ピン

    • MCP2515のMOSI (Master Out Slave In) ピン → UnoのD11ピン

    • MCP2515のMISO (Master In Slave Out) ピン → UnoのD12ピン

    • MCP2515のINT (Interrupt) ピン → Unoの任意のデジタルピン(例: D2)

  • 電源接続: 5VとGNDを接続します。

  • CANバス接続: CANHとCANLピンをCANバスラインに接続します。

 

プログラミング(ライブラリ)

 

Arduino IDEでCAN通信を行うには、通常、mcp_canライブラリSeeed_Arduino_CANライブラリなどを使用します。これらのライブラリには、CANメッセージの送受信、フィルター設定などの関数が含まれています。

 

メリット・デメリット

 

  • メリット:

    • R3の豊富な情報資産と組み合わせられる。

    • CANモジュール自体が安価に入手できる。

  • デメリット:

    • 配線がやや複雑になる。

    • 追加のモジュールが必要になるため、省スペース化が難しい場合がある。


 

Arduino Uno R4 Minima/WiFiでCAN通信を行う方法

 

Arduino Uno R4シリーズ(MinimaおよびWiFi)は、R3とは異なり、内蔵マイコン(Renesas RA4M1)がハードウェアCAN機能をサポートしています。これは大きな進化点です!

しかし、R4ボード自体にはCAN通信の物理層を扱うためのCANトランシーバーチップは搭載されていません。そのため、R3と同様に外部のCANトランシーバーが必要です。

 

必要なもの

 

  1. Arduino Uno R4 Minima または Arduino Uno R4 WiFiボード

  2. CANトランシーバーモジュール (TJA1050/SN65HVD230など)

    • R3の場合と異なり、CANコントローラーは不要です。物理層を変換するトランシーバーのみを準備します。

 

接続方法と実装

 

R4ボードは、特定のピンがハードウェアCANの機能に割り当てられています。Arduino Uno R4シリーズのハードウェアCANは、通常以下のピンを利用します。

  • CAN TX (送信): D6ピン

  • CAN RX (受信): D5ピン

これらのピンをCANトランシーバーモジュールのTXD (Transmit Data) および RXD (Receive Data) ピンにそれぞれ接続します。

  • 電源接続: 5VとGNDを接続します。

  • CANバス接続: CANHとCANLピンをCANバスラインに接続します。

 

プログラミング(ライブラリ)

 

Arduino IDEでUno R4のCAN機能を利用するには、Arduino_CANライブラリを使用します。これは、R4ボードのハードウェアCAN機能を直接利用するための公式ライブラリです。

 

メリット・デメリット

 

  • メリット:

    • SPI接続が不要: ハードウェアCANを直接利用するため、配線がシンプルになる。

    • CPU負荷の軽減: ソフトウェアでCANプロトコルを処理する必要がないため、マイコンの処理能力を他のタスクに回せる。

    • より安定した高速通信: ハードウェアレベルでの処理により、信頼性と速度が向上する。

    • R3と比べてボード自体の処理能力・メモリも大幅に向上しているため、より複雑なCANアプリケーションを実装可能。

  • デメリット:

    • R3のように統合されたCANモジュールが少ないため、トランシーバー単体モジュールを別途用意する必要がある。

    • R4ボードは比較的新しいため、R3ほど情報が豊富ではない可能性がある。


 

それぞれのUnoボードでCAN通信を選ぶ際のポイント

 

特徴 Arduino Uno R3 Arduino Uno R4 Minima Arduino Uno R4 WiFi
CAN機能 外部モジュール(コントローラー+トランシーバー)必須 ハードウェアCAN内蔵(トランシーバー別途) ハードウェアCAN内蔵(トランシーバー別途)
必要な部品 MCP2515などのCANモジュール CANトランシーバーモジュール CANトランシーバーモジュール
配線の複雑さ やや複雑 (SPI+CAN) シンプル (CAN H/L + 電源) シンプル (CAN H/L + 電源)
CPU負荷 ソフトウェア処理のため高い場合あり ハードウェア処理のため低い ハードウェア処理のため低い
推奨用途 予算を抑えたい、基本的なCAN通信学習 より安定・高速なCAN通信、複雑な処理 CAN通信+Wi-Fi/Bluetooth連携、高度なIoT

結論:あなたのプロジェクトに最適なUnoはどれ?

 

  • とにかく安く、基本的なCAN通信の仕組みを学びたい、手元にR3がある

    • Arduino Uno R3 と外部CANモジュールで始めるのが良いでしょう。多くの情報が既存のR3向けに公開されています。

  • より安定した高速なCAN通信を実現したい、マイコンの処理能力をCAN以外のタスクに回したい、今後のプロジェクトで高性能なUnoを使いたい

    • Arduino Uno R4 Minima がおすすめです。ハードウェアCANの恩恵を最大限に享受できます。

  • CAN通信で得たデータをクラウドに上げたい、スマートフォンと連携させたい、ネットワーク経由でロボットを制御したい

    • 迷わずArduino Uno R4 WiFi を選びましょう。CAN通信とWi-Fi/Bluetooth機能を一つのボードで実現できるため、IoTプロジェクトの可能性が大きく広がります。


Arduino Unoシリーズは、あなたのCAN通信プロジェクトを始めるための強力な選択肢を提供します。それぞれのボードの特性を理解し、あなたの目的や予算に合ったUnoを選んでください。