日産もEV戦略を再構築!米国EV4車種から3車種へ、生産延期の背景を探る

先日、トヨタがEVの生産延期を発表したばかりですが、今度は日産自動車が米国でのEV戦略を見直しているというニュースが飛び込んできました。日産は、米国で計画していたEV4車種のうち、2028年以降にミシシッピ州キャントン工場で生産予定だったセダン2車種の開発を中止。代わりに新たに1車種を開発し、EVラインアップを3車種に絞り込むとのことです。さらに、ロイター通信によれば、SUV2車種についても生産開始が当初2028年とされていたものが、それぞれ2028年11月と2029年3月にずれ込む見通しだといいます。

これは、日産がEV市場の現実と、今後の戦略をどのように見据えているのかを示す重要な動きです。一体なぜ、日産はこのタイミングでEVラインアップの再編と生産延期に踏み切ったのでしょうか?その背景と、考えられる今後の日産のEV戦略について深掘りしていきましょう。

 

日産EV戦略見直しの背景にあるもの

 

日産が米国でのEV計画を縮小・延期した背景には、複数の要因が絡み合っていると考えられます。

  1. EV市場の「現実」と需要の見極め: 自動車メーカー各社は、EV普及のスピードを過大に見積もっていた可能性があります。特に米国市場においては、充電インフラの整備状況、高価格帯EVへの需要の頭打ち、そしてガソリン車やハイブリッド車への根強い需要など、EV普及を阻む要因が顕在化し始めています。日産は、そうした市場の「現実」を踏まえ、より確実に需要が見込める車種に集中する判断を下したと見られます。

  2. 収益性の確保と投資の最適化: EV開発には莫大な投資が必要となります。特に多様な車種を同時に開発することは、コスト負担が非常に大きくなります。日産は、過去に経営危機を経験しており、現在は「Nissan NEXT」という構造改革プランのもと、収益性の回復と経営の効率化を進めています。今回のEVラインアップの見直しは、限られた経営資源をより効率的に配分し、収益性の高いEV事業を構築するための「選択と集中」の一環と言えるでしょう。

  3. 特定のセグメントへの集中: 今回開発中止となったのはセダン2車種です。一方、残る3車種はSUVタイプであり、生産延期となる2車種もSUVです。これは、日産が米国市場において、SUVセグメントのEVに注力していく姿勢を示唆しています。SUVは、現在も世界的に需要が高いカテゴリーであり、EVとしても広い室内空間や使い勝手の良さから人気を集めています。市場のニーズに合致した車種に絞り込むことで、開発効率を高め、競争力を強化する狙いがあると考えられます。

  4. 生産体制の最適化とサプライチェーンの課題: EVの生産は、バッテリーの調達や専用部品の安定供給など、ガソリン車とは異なるサプライチェーンの課題を抱えています。複数の車種を同時に、かつ大規模に生産することは、これらの課題をさらに複雑にします。生産開始時期の延期は、サプライチェーンの安定化や、キャントン工場におけるEV生産体制の確立に、当初の想定よりも時間を要していることを示唆している可能性があります。

 

今後の日産EV戦略はどうなる?

 

今回の見直しは、日産の今後のEV戦略に大きな影響を与えるでしょう。

  • SUVラインアップの強化: セダンEVを削減し、SUVに集中することで、日産は市場ニーズに即したEVポートフォリオを構築しようとしています。「アリア」に続くSUVタイプのEVが、日産の電動化を牽引する中心となるでしょう。

  • 技術の「選択と集中」: 開発車種を絞り込むことで、限られた開発リソースを特定の車種に集中させ、より競争力の高い技術や性能を実現することを目指すと考えられます。特にバッテリー技術や電動パワートレイン、先進運転支援システムなど、EVの核となる技術への投資が強化される可能性があります。

  • 北米市場での戦略再編: 米国はEV市場において重要な位置を占めていますが、今回の見直しは、北米における日産のEV戦略をより現実的かつ堅実なものへと修正する動きと見られます。需要の高いセグメントに焦点を当て、確実な販売台数と収益性の確保を目指すでしょう。

 

自動車業界全体への影響

 

日産に加えてトヨタもEV計画の見直しを行っていることは、自動車業界全体に以下のような波紋を広げる可能性があります。

  • 「EV一辺倒」からの軌道修正: 多くの自動車メーカーが、EV化のロードマップを再検討するきっかけとなるでしょう。ハイブリッド車プラグインハイブリッド車など、多様な電動化技術の重要性が再認識されるかもしれません。

  • 収益性重視のEV戦略へ: 無理なEVシフトによる赤字拡大を避け、いかにEV事業で収益を上げていくか、という視点がより強く意識されるようになるでしょう。

  • サプライチェーンの安定化への注力: EV生産におけるサプライチェーン脆弱性が改めて浮き彫りになり、各社がより強固なサプライチェーン構築に注力する動きが加速すると考えられます。

 

まとめ

 

日産の米国でのEV戦略見直しは、EV市場の複雑性と、自動車メーカーが直面する経営課題を浮き彫りにするものです。市場の需要を現実的に見極め、限られた資源を効率的に配分することで、収益性の高いEV事業を構築しようとする日産の堅実な姿勢がうかがえます。

EVシフトは依然として自動車業界の大きな潮流であることに変わりはありませんが、その道のりは決して一本道ではなく、各社が市場の動向に柔軟に対応しながら、最適な戦略を模索していく時代に入ったと言えるでしょう。

今後、日産がどのようにEV市場での競争力を高めていくのか、そして他の自動車メーカーがこの動きにどう追随していくのか、引き続きその動向に注目していきましょう。