自宅に眠っている古いRaspberry Pi、ありませんか?特に「Raspberry Pi 2」をお持ちの方もいるかもしれませんね。最新のPi 4やPi 5が主流の今、ラズパイ2でNAS(ネットワーク接続ストレージ)なんて構築できるの?と疑問に思われるかもしれません。
今回は、そんなRaspberry Pi 2 Model BでOpenMediaVault(OMV)を動かし、NASを構築する可能性について深掘りしていきたいと思います!
Raspberry Pi 2 Model B ってどんなPi?
Raspberry Pi 2 Model Bは、2015年にリリースされたモデルで、それまでのシングルコアCPUからクアッドコアCPU(ARM Cortex-A7)へと大きく進化しました。メモリも1GBに増え、ラズパイ界隈に大きな衝撃を与えたモデルです。
- CPU: Broadcom BCM2836 (900MHz, クアッドコア ARM Cortex-A7)
- RAM: 1GB
- ネットワーク: 10/100Mbps Ethernet (有線LAN)
- USBポート: USB 2.0 x 4
- リリース年: 2015年2月
Raspberry Pi 2でOpenMediaVaultは動くのか?
結論から言うと、「動きます」。
OpenMediaVaultはRaspberry Pi 2 Model B以降のモデルを正式にサポートしており、OMVのウェブサイトからもRaspberry Pi 2/3用のイメージファイルが提供されています。軽量なDebianベースであるOMVにとって、クアッドコアCPUと1GB RAMを持つPi 2は、十分に動作させられるスペックを持っています。
しかし、NASとしての「実力」は?
確かにOMVは動きますが、最新のPi 4/5と比べると、NASとしての実用性にはいくつかの明確な制約があります。
1. ネットワーク速度の限界 (100Mbps Ethernet)
これが最大のボトルネックになります。Raspberry Pi 2の有線LANは最大100Mbps(メガビット/秒)です。ギガビットイーサネット(1000Mbps)が標準となった現代では、この速度は非常に遅く感じられます。
- 実際のデータ転送速度: 100Mbpsは理論値であり、実際のファイル転送速度は、ネットワークの状態やストレージの速度にもよりますが、最大でも約10~12MB/秒(メガバイト/秒)程度です。
- 影響:
2. USB 2.0の制約
Raspberry Pi 2のUSBポートは全てUSB 2.0です。
- 速度: USB 2.0の理論値は480Mbpsですが、実際の転送速度は最大30~40MB/秒程度です。
- 影響: たとえ高速なSSDを接続したとしても、このUSB 2.0の速度がボトルネックとなり、ストレージ本来の性能を引き出せません。上記LANの速度がボトルネックとなるため、USB 2.0自体が直接的な問題となることは少ないかもしれませんが、将来的なアップグレードパスを塞ぎます。
3. CPUとRAMの限界
クアッドコアCPUと1GB RAMは、OMVの基本動作には十分です。しかし、
- 高度なサービス: Dockerコンテナを複数動かしたり、Plex Media Serverでリアルタイムのトランスコーディング(動画形式の変換)を行ったりするには、CPUパワーが不足します。
- 同時処理: 複数のクライアントからのアクセスや、NASがバックグラウンドで他のタスク(バックアップなど)を実行している場合に、応答速度が低下する可能性があります。
Raspberry Pi 2でNASを構築するなら、どんな用途?
これらの制約を踏まえると、Raspberry Pi 2でNASを構築する際は、その用途を限定することが重要です。
- ごく小容量のファイル共有: 文書ファイル、写真など、サイズが小さく、頻繁にアクセスしないデータ共有。
- バックアップ用途(非常にゆっくり): 重要だが、緊急性の低いデータのバックアップ先として。ただし、初回バックアップにはかなりの時間を要します。
- 特定機器のデータ保存: 防犯カメラの映像記録(低解像度)や、スマートホームデバイスのログデータなど、少量で継続的なデータ保存。
- 学習・実験用: NASの仕組みやOpenMediaVaultの操作を学ぶための実験台として。
まとめ:Pi 2は「動くが、快適ではない」
Raspberry Pi 2 Model Bは、確かにOpenMediaVaultを動かすことができますし、基本的なファイル共有機能も提供できます。しかし、そのネットワーク速度とUSB 2.0の制約により、現代のNASに求められるような「快適なデータ転送」や「高速なアクセス」を期待することはできません。
もしあなたがRaspberry Pi 2をすでに持っていて、
- 「とりあえず動けばいい」
- 「速度は気にしない」
- 「学習用に試してみたい」
といった考えであれば、挑戦してみる価値は十分にあります。
しかし、もしこれから新しくRaspberry Piを購入してNASを構築するつもりであれば、迷わずRaspberry Pi 4 Model B(最低でも4GB RAM)を選ぶことを強くお勧めします。価格に見合った、格段に快適なNAS体験が得られるはずです。
ご自宅の眠れるPi 2を再活用したい方は、ぜひ上記の点を踏まえて、ミニマムなNAS構築にチャレンジしてみてください!