ワイヤレスイヤホンやヘッドホンが日常に溶け込んでいる現代、Bluetoothオーディオコーデックという言葉を耳にする機会も増えました。LDACやaptXなど、高音質・低遅延を謳う様々なコーデックがある中で、実は多くのBluetooth機器が採用している「SBC」と「AAC」というコーデックをご存知でしょうか?
今回は、Bluetoothオーディオの土台とも言えるこれらの基本コーデックについて、その特徴やメリット・デメリットを分かりやすく解説していきます。
Bluetoothオーディオコーデックとは?
まず、Bluetoothオーディオコーデックについて簡単におさらいしましょう。
Bluetoothで音声を無線で送る際、音源データはそのままでは容量が大きすぎるため、一度圧縮(符号化)されて送信され、受信側で展開(復号化)されて再生されます。この「圧縮・展開の方式」を定めたものが「オーディオコーデック」です。
コーデックの種類によって、音質、遅延、接続安定性などが大きく変わってきます。
1. SBC(Subband Codec):Bluetoothオーディオの「標準」
SBCは「Subband Codec(サブバンドコーデック)」の略で、BluetoothオーディオのA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)プロファイルで標準的に定められているコーデックです。つまり、Bluetooth対応のオーディオ機器であれば、ほぼ100%このSBCに対応しています。
SBCの特徴
- 普及率の高さ: Bluetoothオーディオ機器のほとんどが対応しているため、どんな組み合わせでもとりあえず音が出る安心感があります。
- 汎用性: 広く普及しているため、メーカーや機種を問わず互換性があります。
- 比較的高い圧縮率: データ量を大幅に削減して送信するため、比較的消費電力が少ないという側面もあります。
SBCのメリット
- とにかく繋がる: 機器を選ばず、確実にBluetooth接続で音声再生が可能です。
- 安定性: 長年の利用実績があり、基本的な接続は安定しています。
SBCのデメリット
- 音質が「標準的」: 他の高音質コーデックと比べると、音質面で劣ることが多いです。特に高音域や低音域の情報が失われやすく、音の解像度や奥行きが犠牲になることがあります。
- 遅延が発生しやすい: 動画視聴やゲームプレイでは、音と映像のズレ(リップシンクのずれ)が気になることがあります。一般的に、100ms〜200ms(0.1秒〜0.2秒)程度の遅延が発生すると言われています。
2. AAC(Advanced Audio Coding):iPhoneユーザーにおなじみの高音質コーデック
AACは「Advanced Audio Coding(アドバンスト・オーディオ・コーディング)」の略で、MPEG-2 AACやMPEG-4 AACとして標準化された音声圧縮コーデックです。iPhoneやiPadなどのApple製品が標準的に採用しているBluetoothオーディオコーデックとして非常に有名です。
AACの特徴
- Apple製品との相性: iPhoneやiPad、MacなどのApple製品でBluetoothイヤホン・ヘッドホンを使用する際、自動的にこのAACが選択されることが多く、Apple製品との間で最適化された高音質を実現します。
- SBCより高音質: SBCと比較して圧縮効率が高く、同じビットレートでもSBCよりも高音質を維持できる傾向にあります。特に中高音域の再現性に優れていると言われます。
- ストリーミングサービスで多用: YouTubeやApple Music、Spotifyなどの主要な音楽・動画ストリーミングサービスでも、音源のフォーマットとしてAACが広く利用されています。
AACのメリット
- iPhoneユーザーにとっての最適解: Apple製品ユーザーであれば、追加の設定なしで高音質のワイヤレスオーディオが楽しめます。
- SBCよりクリアな音質: 特に中高音域のクリアさや解像度でSBCより優位です。
- 一般的なストリーミングサービスとの親和性: 日常的に利用する多くのサービスでAACが使われているため、親和性が高いです。
AACのデメリット
- Androidでの相性問題: AndroidスマートフォンでもAACに対応している機種は多いですが、メーカーや機種、チップセットによってエンコード(送信側での圧縮)性能が異なり、SBCよりも音質が悪化したり、遅延が増えたりするケースが稀にあります。
- 消費電力: SBCよりも複雑な処理を行うため、一般的にSBCより消費電力が増える傾向にあります。
- 遅延は依然存在: SBCよりは改善されるものの、aptX LLやLDAC、aptX Adaptiveなどの低遅延特化型コーデックと比べると、依然として遅延は発生します。
結局、SBCとAAC、どちらが良いの?
一概にどちらが良いとは言えません。状況によって最適なコーデックは変わってきます。
まとめ:基本を知ってワイヤレスオーディオをもっと楽しもう!
SBCとAACは、私たちが日々利用しているワイヤレスオーディオの土台となっている重要なコーデックです。特に意識することなく使っていることが多いかもしれませんが、それぞれの特性を知ることで、より快適なオーディオ体験を得るためのヒントになります。
「高音質コーデックではないからダメ」というわけではなく、用途や機器の組み合わせによって最適なコーデックは異なります。ぜひ、ご自身の環境に合わせて、最適な設定や機器選びを楽しんでみてくださいね。