NTSC比とは?ディスプレイの色再現性を評価する指標を解説

ディスプレイのスペックを調べると、「NTSC比 72%」や「NTSC比 100%」といった表記を見かけることがあります。これはディスプレイの色再現能力を示す指標の一つですが、「NTSC比」とは何を意味し、どのように色の再現性を評価するのか気になったことはありませんか?

本記事では、NTSC比の概要や計算方法、sRGBやAdobe RGBとの違い、ディスプレイ選びの際のポイントについて解説します。


1. NTSC比とは?

NTSC とは、ディスプレイの色再現範囲を、NTSC(National Television System Committee)のカラースペースと比較して示した割合 です。

📌 NTSC比のポイント

NTSC(1953年策定)の色空間と比較して、どの程度の色域をカバーしているかを示す
ディスプレイの色再現性を評価する際に使われる
通常は「NTSC比 72%」や「NTSC比 100%」のように表記される
sRGB・Adobe RGB・DCI-P3など、他のカラースペースと関連性がある


2. NTSCカラースペースとは?

NTSC比の基準となる「NTSCカラースペース」は、1953年にアメリカのNTSC(National Television System Committee)が定めたカラースペース です。当時のアナログテレビ放送用に策定されたもので、現在では直接的に使われることは少なくなっています。

🔍 NTSCカラースペースの特徴

  • sRGBよりも広い色域 を持つ(sRGBはNTSC比約72%に相当)
  • 現在のテレビ放送やディスプレイ規格とは異なる(例えば、DCI-P3やRec. 709のほうが実用的)
  • ディスプレイのスペック表記としては今でも使われる

3. NTSC比と他のカラースペースの関係

ディスプレイの色域を評価する指標として、NTSC比のほかに sRGB、Adobe RGB、DCI-P3、Rec. 2020 などのカラースペースが存在します。

以下の表は、各カラースペースの色域の広さをNTSC比で表したものです。

📊 カラースペースのNTSC比換算

カラースペース NTSC比(目安) 主な用途
sRGB 約72% Web、一般的なディスプレイ
Adobe RGB 約92% 写真編集・印刷
DCI-P3 約86% 映画・HDRコンテンツ
Rec. 2020 約128% 4K・8K映像制作

📌 ポイント

  • sRGB ≒ NTSC比72%
  • NTSC比100%のディスプレイは、Adobe RGBに近い広色域をカバー
  • DCI-P3(映画業界標準)は、NTSC比86%に相当
  • Rec. 2020はNTSC比128%と非常に広色域

このように、NTSC比は ディスプレイの色再現性を大まかに評価する基準 として使われています。


4. NTSC比の計算方法

NTSC比は、ディスプレイのカラースペースの色域の面積を、NTSCカラースペースの色域の面積と比較 することで算出されます。

🔢 計算イメージ

\text{NTSC比(%)} = \left( \frac{\text{ディスプレイの色域面積}}{\text{NTSCカラースペースの色域面積}} \right) \times 100

例えば、

  • sRGBの色域面積はNTSC比72%
  • Adobe RGBの色域面積はNTSC比92%
  • DCI-P3の色域面積はNTSC比86%

このように、各カラースペースがNTSCと比較してどの程度の色域を持っているかを示すことができます。


5. ディスプレイ選びにおけるNTSC比の見方

📌 NTSC比が高いほど良いのか?

一般的に、NTSC比が高いほど色再現性は良くなりますが、用途に応じたカラースペースの選択 が重要です。

💡 ディスプレイ選びのポイント

  • Web閲覧・オフィス用途NTSC比72%(sRGB相当)で十分
  • 写真編集・デザインNTSC比90%以上(Adobe RGB対応が理想)
  • 映画鑑賞・映像制作:DCI-P3対応(NTSC比86%以上)
  • プロ向けの印刷・映像編集NTSC比100%以上(Adobe RGBやRec. 2020対応が望ましい)

💻 NTSC比が記載されていない場合は?

NTSC比の代わりに、sRGB 100%Adobe RGB 99% などの表記がされていることもあります。その場合は、以下の換算を参考にすると良いでしょう。

📌 換算の目安


6. NTSC比の注意点

NTSC比はあくまで「目安」であり、実際の色再現性とは異なる場合がある
sRGBやAdobe RGBのカバー率と混同しないことが重要
ディスプレイのカラープロファイルやキャリブレーションによっても実際の色再現は変わる

例えば、「NTSC比100%のディスプレイ」でも、色補正が適切に行われていないと正しい色が表示されないことがあります。そのため、プロ向けの作業ではキャリブレーションツール を使って色を調整するのが一般的です。


7. まとめ

NTSC比とは、ディスプレイの色域を1953年策定のNTSCカラースペースと比較した指標
sRGBはNTSC比72%、Adobe RGBはNTSC比92%、DCI-P3はNTSC比86%に相当
NTSC比が高いほど広色域だが、用途に合った色空間を選ぶことが重要
ディスプレイ選びでは、NTSC比とともにsRGB・Adobe RGB・DCI-P3のカバー率もチェックすると良い

NTSC比は色再現性の指標のひとつですが、実際にはsRGBやAdobe RGBなどのカラースペースのカバー率も合わせて確認するのがベスト です。用途に適したディスプレイを選び、より美しい映像や写真を楽しみましょう!