無線LANの暗号化技法とは?

無線LANWi-Fi)は、日常生活に欠かせない技術ですが、セキュリティも非常に重要です。無線通信では、データが空中を飛び交うため、暗号化によって情報が第三者に盗まれたり改ざんされたりしないように保護する必要があります。この記事では、無線LANで使用される代表的な暗号化技法について解説します。


1. WEP(Wired Equivalent Privacy)

WEPは、無線LANの初期の暗号化技術です。1999年にIEEE 802.11規格で導入され、Wi-Fiネットワークのデータを暗号化して保護する役割を果たしました。

  • 仕組み: WEPはRC4というストリーム暗号を使用し、固定のキー(通常は64ビットまたは128ビット)を使用してデータを暗号化します。
  • 問題点: しかし、WEPには多くの脆弱性があり、簡単に破られてしまう可能性があります。特に、初期化ベクトル(IV)が短く、繰り返し使用されることから、攻撃者がWEPキーを比較的簡単に推測できてしまう点が問題視されています。
  • 現状: 現在、WEPは非常に脆弱であり、もはや安全とは言えません。そのため、多くのデバイスルーターではWEPのサポートが廃止されており、使用は推奨されていません。

2. WPA(Wi-Fi Protected Access

WEPの脆弱性を補うため、2003年に登場したのがWPAです。WPAは一時的な対応策として開発され、より強力なセキュリティ機能を提供します。

  • 仕組み: WPAは、TKIP(Temporal Key Integrity Protocol)を採用しており、毎パケットごとにキーを変化させることでセキュリティを強化しています。これにより、WEPのようなキーの再利用問題を回避しています。
  • 問題点: しかし、WPAも後に脆弱性が発見され、完全なセキュリティを提供するわけではありません。特に、暗号化に使われるRC4自体の問題が指摘されています。

3. WPA2

WPAの後継として登場したのがWPA2です。2004年に導入され、現在のWi-Fiセキュリティの標準となっています。

  • 仕組み: WPA2は、より安全な暗号化方式であるAES(Advanced Encryption Standard)を採用しています。AESは強力なブロック暗号で、128ビット、192ビット、または256ビットのキーを使用してデータを保護します。
  • CCMPの利用: WPA2は、TKIPの代わりにCCMP(Counter Mode with Cipher Block Chaining Message Authentication Code Protocol)というプロトコルを使用し、データの機密性と整合性を強化しています。
  • セキュリティ: WPA2は非常に強力で、一般的なWi-Fiネットワークでの暗号化標準として推奨されていますが、後述するWPA3の登場により、一部の脆弱性もカバーされています。

4. WPA3

2018年に発表されたWPA3は、最新の暗号化技術を取り入れ、さらに強固なセキュリティを提供します。WPA2の進化版として、特にパスワードベースの攻撃に対して強化されています。

  • 仕組み: WPA3では、SAE(Simultaneous Authentication of Equals)という新しいキー交換プロトコルを採用しています。これにより、辞書攻撃やブルートフォース攻撃が難しくなり、パスワードのセキュリティが向上します。
  • 改善点: WPA3は、前方秘匿性(Forward Secrecy)を提供し、セッションキーが漏洩した場合でも、過去の通信が解読されないように設計されています。また、オープンWi-Fiネットワークでも暗号化を行う「個別データ暗号化(Individualized Data Encryption)」機能が追加されました。
  • 普及状況: まだ完全には普及していませんが、WPA3対応のデバイスルーターが徐々に増えてきています。

まとめ

無線LANの暗号化技術は進化を続けており、セキュリティの向上が図られています。WEPのような古い技術はもはや安全ではないため、WPA2やWPA3のような新しい暗号化方式を利用することが推奨されます。特に、AESを使用したWPA2は現在広く使用されており、家庭やビジネスでのWi-Fiセキュリティに最適です。今後は、WPA3が主流となることで、さらに安全な無線LAN環境が提供されることが期待されています。

Wi-Fiのセキュリティを保つためには、強力なパスワードと最新の暗号化技術を使用することが重要です。常にセキュリティ設定を確認し、安全なネットワーク環境を維持しましょう。