Raspberry Piは、手軽に利用できるシングルボードコンピュータとして、教育目的や趣味のプロジェクトからプロトタイピングに至るまで、幅広く活用されています。Raspberry Piは登場以来、複数のバージョンがリリースされており、それぞれが性能や機能の向上を遂げてきました。今回は、主要なRaspberry Piのバージョンごとのハードウェアスペックを比較し、その特徴を紹介します。
1. Raspberry Pi 1 Model B (2012年リリース)
Raspberry Piシリーズの最初のモデルは、コストを抑えたシンプルな設計が特徴で、基本的なプログラミング学習や簡単なプロジェクトに適していました。
- CPU: Broadcom BCM2835 (ARM11) 700MHz
- RAM: 256MB(後に512MBに増加)
- GPU: Broadcom VideoCore IV
- USBポート: 2つのUSB 2.0ポート
- ネットワーク: 100MbpsのEthernetポート
- GPIO: 26ピン(後に40ピンへ拡張)
- ストレージ: SDカードスロット
特徴: シンプルな構造で、軽量なプロジェクトやLinuxの基礎学習に向いていました。
2. Raspberry Pi 2 Model B (2015年リリース)
Raspberry Pi 2は、最初のモデルに比べて大幅に性能が向上し、より多くのアプリケーションや複雑なプロジェクトに対応できるようになりました。
- CPU: Broadcom BCM2836 (ARM Cortex-A7) 900MHz クアッドコア
- RAM: 1GB
- GPU: Broadcom VideoCore IV
- USBポート: 4つのUSB 2.0ポート
- ネットワーク: 100MbpsのEthernetポート
- GPIO: 40ピン
- ストレージ: MicroSDカードスロット
特徴: クアッドコアCPUと1GBのメモリにより、よりマルチタスクや複雑な処理が可能となり、エントリーレベルのサーバーやメディアセンターとしても利用されました。
3. Raspberry Pi 3 Model B (2016年リリース)
Raspberry Pi 3は、Wi-FiとBluetooth機能が追加され、さらに多くのプロジェクトやIoTデバイスの開発に適したものとなりました。
- CPU: Broadcom BCM2837 (ARM Cortex-A53) 1.2GHz クアッドコア
- RAM: 1GB
- GPU: Broadcom VideoCore IV
- USBポート: 4つのUSB 2.0ポート
- ネットワーク: 100MbpsのEthernetポート、802.11n Wi-Fi、Bluetooth 4.1
- GPIO: 40ピン
- ストレージ: MicroSDカードスロット
特徴: 内蔵Wi-FiとBluetoothにより、IoTプロジェクトの開発が大幅に簡単になり、ケーブルを減らしたワイヤレス接続の利用が可能になりました。
4. Raspberry Pi 3 Model B+ (2018年リリース)
Raspberry Pi 3 Model B+は、前バージョンの改良型であり、より高いパフォーマンスとネットワーク速度を提供します。
- CPU: Broadcom BCM2837B0 (ARM Cortex-A53) 1.4GHz クアッドコア
- RAM: 1GB
- GPU: Broadcom VideoCore IV
- USBポート: 4つのUSB 2.0ポート
- ネットワーク: 300Mbps(ギガビットEthernet over USB 2.0)、802.11ac Wi-Fi、Bluetooth 4.2
- GPIO: 40ピン
- ストレージ: MicroSDカードスロット
特徴: ギガビットEthernetのサポートにより、ネットワーク接続速度が向上し、IoTゲートウェイやエッジコンピューティング向けにさらに強化されました。
5. Raspberry Pi 4 Model B (2019年リリース)
Raspberry Pi 4は、シリーズ初のRAMオプションが選べるモデルで、処理速度や接続性も大幅に向上しています。
- CPU: Broadcom BCM2711 (ARM Cortex-A72) 1.5GHz クアッドコア
- RAM: 2GB, 4GB, 8GB(オプション)
- GPU: Broadcom VideoCore VI
- USBポート: 2つのUSB 3.0ポート、2つのUSB 2.0ポート
- ネットワーク: ギガビットEthernet、802.11ac Wi-Fi、Bluetooth 5.0
- GPIO: 40ピン
- ストレージ: MicroSDカードスロット、USBブートサポート
- ビデオ出力: 2つのMicro HDMIポート(4K出力対応)
特徴: USB 3.0のサポートや4Kデュアルディスプレイ出力が可能になり、Raspberry Pi 4はデスクトップPCの代替としても利用できるほどの性能を持つようになりました。また、RAMオプションにより、用途に応じたモデル選択が可能になっています。
6. Raspberry Pi 400 (2020年リリース)
Raspberry Pi 400は、コンピュータとキーボードが一体化したユニークなモデルです。これは、家庭や教育現場での利用を想定したデザインです。
- CPU: Broadcom BCM2711 (ARM Cortex-A72) 1.8GHz クアッドコア
- RAM: 4GB
- GPU: Broadcom VideoCore VI
- USBポート: 2つのUSB 3.0ポート、1つのUSB 2.0ポート
- ネットワーク: ギガビットEthernet、802.11ac Wi-Fi、Bluetooth 5.0
- GPIO: 40ピン(専用アダプタ使用)
- ストレージ: MicroSDカードスロット
- ビデオ出力: 2つのMicro HDMIポート(4K出力対応)
特徴: キーボード一体型のデザインで、即座に使い始められるシンプルさが特徴です。Raspberry Pi 4をベースに、教育や家庭用デバイスとしても人気があります。
まとめ
以下は、Raspberry Piのバージョンごとの主なハードウェアスペックの比較表です。
バージョン | CPU | RAM | ネットワーク | USBポート | GPIOピン数 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|---|
Raspberry Pi 1 Model B | ARM11 700MHz | 256MB/512MB | 100Mbps Ethernet | 2 x USB 2.0 | 26ピン/40ピン | 最初のモデル、教育向け |
Raspberry Pi 2 Model B | Cortex-A7 900MHz | 1GB | 100Mbps Ethernet | 4 x USB 2.0 | 40ピン | クアッドコア、1GB RAM |
Raspberry Pi 3 Model B | Cortex-A53 1.2GHz | 1GB | 100Mbps, Wi-Fi, BT4.1 | 4 x USB 2.0 | 40ピン | Wi-FiとBluetooth内蔵 |
Raspberry Pi 3 Model B+ | Cortex-A53 1.4GHz | 1GB | ギガビット, Wi-Fi ac | 4 x USB 2.0 | 40ピン | ギガビットEthernet対応 |
Raspberry Pi 4 Model B | Cortex-A72 1.5GHz | 2GB/4GB/8GB | ギガビット, Wi-Fi ac | 2 x USB 3.0, 2 x USB 2.0 | 40ピン | 高性能、4K出力対応 |
Raspberry Pi 400 | Cortex-A72 1.8GHz | 4GB | ギガビット, Wi-Fi ac | 2 x USB 3.0, 1 x USB 2.0 | 40ピン(アダプタ使用) | キーボード一体型で、即座に使用可能 |
各バージョンは、パフォーマンス、ネットワーク、I/Oポートの数などが異なり、プロジェクトに応じた選択が可能です。例えば、デスクトップPC代替やメディアセンターとして使いたい場合はRaspberry Pi 4が適しており、シンプルなIoTプロジェクトにはRaspberry Pi 3シリーズが最適です。